80億分の1をプレイ パキスタンの女の子Zainab Malikになって

いま話題になっている『80億分の1』というブラウザゲームをプレイした。

国連や世界保健機関(WHO)、世界銀行など、世界141カ国の実際の統計データをベースにした過酷な人生ガチャを体験するシミュレーションゲームだ。

生まれる国も、両親の経済状況も、性別もすべてランダム。プレイヤーにはゲーム中の叶うかどうかわからない希望を選択する権利しかない。

日々の決断や運によって「健康」「幸福」「知識」「人間関係」といったパラメーターが変動し、生まれた環境によっては貧困や疾病、紛争、児童婚といった厳しい現実に直面し、若くして命を落とすこともある。

拠点は韓国にあるとみられており、開発者の「Jin Hwi-eus」(仮名)は、個人情報を伏せる条件で応じた韓国メディアのインタビューで「自分が生まれた環境への感謝だけでなく、異なる境遇に生まれた人々への理解や尊重につながってほしい」と開発の意図を語っている。

実際にプレイして僕が体験したのは、パキスタンに生まれた女の子、Zainab Malikの人生だった。

絵を描くのが好きで画家を夢見ているすぐにお腹を壊して下痢をしてしまう子だったが、クリケットに励むことで友人関係に恵まれ、活発な女の子として育っていく。暮らしはとにかく貧しく、1日1食きりの生活の日々が多かった。それでも親と兄たちは「学校に行きたい」という僕という彼女の希望を叶えてくれた。

けれどその志は中学卒業とともに途絶え、家業を手伝うことになる。

やがて周囲や見知らぬおじさんたちが次々と結婚を勧めてくるようになるが、すべて断り続けた。自分に刷り込まれてきた「パキスタン女性」に反抗するためだ。

いずれこの国と宗教観すら変えてみせる。そんな志を抱いて再び学校に行ける機会を待っていたが、気づけばいつの間にか30歳になっていた。その後も縁談を断り続け、そして35歳のとき、肺炎などの下気道感染症でこの世を去った。

ほんの少しのお金を惜しんで治療を先延ばしにしていたら、あっという間に人生が終わってしまった。僕が僕に刷り込んできた情報で、僕が彼女の人生を終わらせてしまったと感じた。

何より怖かったのは、プレイの節目に自分自身が残したコメントだった。彼女の人生で投げかけられた3つの問いに、僕はこう答えていた。

・5歳:5歳のZainabに、今いちばん必要なものは何でしょうか?

「学校に行けること」

・15歳:Zainabが夢見ることのできる未来と、15歳のあなたが夢見ていた未来は、どれほど違っていたでしょうか?

「全く違っていた」

・30歳:Zainabの人生とあなたの人生は、何が同じで、何が違いますか?

「結婚していない」

学んで、女性としてパキスタンを変える。

そう願った幼少期を経て、15歳で自分とは全く違う未来しかないことを知り、そして30歳で「結婚していない」と答えていた自分。「結婚していない」という回答の違和感として、あれほど頑なに拒み続けていたはずの結婚に対して、実は心のどこかで望みを抱いていたのだろう。

彼女と同じ「1秒」に生まれた他の世界の4人は、70歳から93歳まで人生を全うしていた。そのなかには、パキスタンよりさらに貧しい国に生まれた人もいた。

いろいろと考えさせられる、素晴らしい内容のブラウザゲームだった。ただ、僕はもう、僕の選択で世界の誰かの僕という人生を終わらせたくない。いまはそんな思いが強く残っている。

世界情勢などまったく知識がないなかで、自由な発想でこのゲームに参加したら、どんな結果になるだろうか?

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