乃木坂46井上和さんのオールナイトニッポンを初めて聞きました。
彼女が世間で大人気のアイドルであることくらいしか、僕は知らなかった。 けれど彼女のトークが、思いのほか面白かったのだ。
「地味で健気な女の子(乃木坂46さんのメンバーを見たけれどいない)」がタイプの僕が、正反対の華やかな大人気アイドルのラジオを聴き続けたら、果たしてファンになってしまう(=恋に落ちる)のだろうか?
この個人的な好奇心を検証する実験として、僕はこんな設定を用意してみた。
【彼女はクラスメイトで、僕の隣の席に座っている学内でも大人気の女の子】
彼女のことはまったく知らない。でも彼女は隣の席から僕に語りかけてくる。
これは、実際のラジオの言葉だけを頼りに、僕が彼女を知り、本当に惹かれていく日が来るのかを試す、少し特殊な観察記録である。
サッカーについて語る井上さん PKと禁断のクラブチーム誕生と「パシュモ」
「ねえ、サッカーのPKってなに?」
隣の席から、唐突にそんな声が降ってきた。 彼女にはサッカーをやっていた弟がいるらしいが、本人はルールをまったく知らないという。
僕はあえて知らないふりをした。
ラジオが好きな僕の頭の片隅では、TBSラジオのプチ鹿島さんを思い浮かべる。彼はPKと呼ばれている。安住アナの「ポンカン」のネタがよぎったけれど、華やかな彼女にはどうにも似合わない。
口に出すのはやめておいた。

「神奈川出身だからさ、サッカーチームなら知ってるんだよ。川崎フロンターレマリノスとか」
一番やっちゃいけない合併である。
川崎フロンターレと横浜F・マリノス。同じ神奈川県を拠点とし「神奈川ダービー」と呼ばれるほどバチバチに対立する宿敵同士だ。
そんな絶対に交わってはいけない2チームを、彼女は悪びれもなく融合させてしまった。周囲に両チームのサポーターがいないことを祈るばかりだ。でも彼女が言うと許されてしまう不思議な引力がある。
それにしても、彼女は意外とよく喋る女の子だった。 ただの愛想笑いでやり過ごすのではなく、自分の伝えたいことを、まっすぐに言葉にしていくタイプ。
熱を帯びたトークの最中、彼女は交通系ICカードのPASMOを「パシュモ」と思い切り噛んだ。
世間から見れば、最高にキュートでおいしい瞬間のはずだ。普通なら照れたり、そこで笑いを取ったりするだろう。 しかし彼女は、完全にスルーして話を続けたのだ。
自分が伝えたいことへの熱量が、小さなミスやかわいさのアピールを完全に上回っている。
華やかさの裏にある、ちょっと天然でひたむきな熱量。地味で健気な子が好きな僕のアンテナが、ほんの少しだけ反応した気がした。
彼女は来週2時間歩き続けながら喋るという。
よくわからない女の子だ。


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